・地氣と天氣がぶつかり合った
霧が晴れるように、
さっと消え去ることを「霧消(むしょう:mu-shou)」
と言います。
昔から、地の氣が天の氣と反応して起こるのが霧とされていて、
あめかんむりの下の務(つとめる:tsuto-me-ru)は、
農耕に従事することを言うので、
霧がかかると農地になんらかのもたらしがあることから、
ム(mu)と発音し天候を表す文字が成立したと推測されています。
やがて、これが天候だけではなく、
情緒や、情景、気分などを表す言葉となります。
なんとなく、葛藤や哀愁が表現されるのはそのせいなのでしょうか。
・霧と霞の違い
数年前、広島市に住んでいた頃、
よく一人で宮島へ通いました。
住んでいたのが佐伯区だったので、
バスと広電でのんびりと向かったものです。
霧も霞(かすみ:kasumi)も靄(もや:moya)も、
文学的には同じものではありますが、
近くしか見渡せない状態を、霧。
遠くまで識別できる状態を、靄というのだそうです。
この言葉の分け方は、俳句によく使われます。
春を霞。秋を霧。と季語では使われています。
宮島の小高い場所から眺める、夕暮れ時の茶屋から眺める、
岩国の街明かりが、満開の桜で霞にかかってぼんやりと美しかった。
景色はぼんやりだったけれど、
記憶ははっきりとしています。
その差異が、心に深く刻まれているのでしょう。
その時の情景を、以前、作品の背景にしたものです。